第3回ネオ自由律公募2003年5月論評

──────────────────── 審査委員長の挨拶および泰平賞発表 投稿者:審査委員長  投稿日: 6月 1日(日)23時50分12秒 <審査委員長の挨拶> 第3回泰平賞にはダダ日記新設、ダダ日記廃止、URL引っ越しといったような劇的な転換期であったにもかかわらず35句の投句がありました。また、投句の内容は前回にも増してハイレヴェルなモノになっているように思われ、嬉しい限りです。どうもありがとうございました。 今回から泰平賞に加え、笑えるものを評価する<泰平おもろ賞>と音楽的要素を評価する<泰平音楽賞>を新設しました。これからの躍進を支える賞になることを願っております。それでは第3回泰平賞の発表します。 「第3回泰平賞(2003年5月期)」 104. リンク付俳句 (by:泰平) (泰平賞最終候補) 91 「X+Y=X Y≠0 ∴X≠X」 ∵X=X(by:ひろし )      105. 雪の積もる季節だった。 うちで作るもちはんまいぞう。と老母がやってくる。もちを焼く匂いがする。別に欲しいわけでもないが断るわけでもなく不取敢みどりいろのずんだもちを頼む。私は久し振りに庭を歩いた。やはり婆ひとりではこの家は広すぎるのか、庭はけっしてゆきとどいていなかったが昨夜の雪のせいでま白に染まった庭は寂漠として静かだった。ふと見ると、冬牡丹。のびのびと水を吸ったま赤な花弁から甘露な美しさが辺りに冷たくしみこんでいた。それを見ながら もちをほおばると    淡いあまみが         口の中に広がった。 (by:eizo ) 122. ネオ自由律(by:ネオ自由律) 「泰平おもろ賞」 112.躊躇・薔薇・憂鬱(by:三浦理花 ) 「泰平音楽賞」 119. RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUN(by:NICO) (泰平おもろ賞最終候補) 95.じゅわ じゅーわわ じゅわ じゅわ じゅー じゅー 肉食べたいな アンチベジタリアーン(by:お腹っぷ ) 121.一人で村おこし。(by:なお。) (泰平音楽賞最終候補) 120.あの人の机の上にミルクティー(by:ひさよ) <評> [3t] 「泰平賞」の泰平氏はかねてから、この「リンク付き俳句シリーズ」を練ってきた。シリーズを通しての特徴は、書かれた内容(「リンク付俳句」など)がその意味のみを同語反復的に表しているというストイックな表記がされている点と、一つ一つの任意に区切られた言葉に、その言葉をGoogle検索したページがリンクされてあるという点にある。 言葉というものは、使い方や受け方により限り無くその意味を広げ、使う人、受ける人の価値観や環境により、常に有機的に変化しているものである。俳句の世界のすごさは、そんな一つ一つの言葉の意味の宇宙的広がりを限られた文字数で表現しているところ、もしくは宇宙的広がりをもった言葉でもって芸術的小宇宙を造り出そうとするところにあると思われる。「リンク付き俳句シリーズ」はそんな俳句の魅力の断面図を、ITテクノロジーを駆使して具現化することにより、「言葉の意味の広がりと変化」そのものを可視化しているシリーズである。 そんな「リンク付き俳句シリーズ」の中でリンク付俳句を特に評価した理由としては、唯一、検索結果が0件であったことがあげられる。Googleは、ロボットが世界中のwebを1カ月〜2カ月に一度巡回し、検索情報をアップデートしていくシステムを採用している。このことから、間違いなく、数カ月後には検索結果が1件かそれ以上なっていることが予想される。さらには、この句の普及、もしくはweb上で発表する俳句の特性をいかした「リンク付俳句」という新概念の浸透&普及とともにそのヒット数が増え、いずれはその意味が有機的に変化していく様が見られるだろうという壮大な野心&ある種のマニフェスト的要素を含む作品であると捉え、泰平賞に選んだ。 [31] (泰平賞最終候補)、ひろし氏による「X+Y=X Y≠0 ∴X≠X」∵X=Xは一見意味不明な、(数学で用いられる記号を主とした)記号のみで構成された奇抜な句である。その装いはとてもかっこよく、百年後の国語の教科書には[「21世紀の俳句」として掲載してほしい程である。では内容をじっくり読み解いてみましょう。 X+Y=X。はいはい、ということはYは0ですね。Y≠0。え?Yは0じゃないの?∴X≠X。ゆえにXはXじゃないんだ。??。XはXだよ。何を意味不明な事言ってんだ?…と思いきや「X+Y=X Y≠0 ∴X≠X」←カギカッコで括られているではありませんか。カギカッコ=台詞と捉えると一行目は意味不明な論理を語っている誰かの台詞であろうか。 では2行目。∵X=X。なぜならばX=X。うーん…なんで「なぜならばX=X」なんだろう?1行目が台詞だと2行目はそれに対してのレスポンスであろうか。カギカッコがないので口に出さずに想っていることだろうか。となるとここでちょっとした「行間」があるのではと推測させる。○×□△、なぜならばXはXだからと。その「行間」(○×□△)には「お前はアホだ」とか「お前は間違っている」とか「俺は正しい」とか何かが入るのであろうか。 以上の事からこの句は、<訳の分からない論理の台詞を吐く人がいて、それに対し不満や疑念を抱く他者がいるという>コミュニケーションのすれ違いを数学&国語で用いられる記号を融合して表現した句なのではないか。これらはあくまで私の推測にすぎないが、何にせよただの記号の羅列ではなさそうだ。国語と数学という学際性と「反論理的思考」対「論理的思考」という構図(であろう)内容とが上手く相似形をなしていて面白いとおもった。この表現方法を追求するのも面白いのではないだろうか。 [32] (泰平賞最終候補)、eizo 氏の「雪の積もる季節だった。…」は雪の季節の自分と老婆とのやりとり&それを包む風景を実に淡々と描いた句である。ここでの評価は、しかし必ずしもその描写の美しさや完成度によるものではない。一番の評価点は、これを「ネオ自由律」として投句したeizo氏のコンセプトの部分にある。何より、その長さは俳句と言うにはあまりに長過ぎるものであり、その過激さが内容と反している点もカッコ良い。 また、前回泰平賞を受賞した「先手 5六歩 後手 同 飛」とのコントラストの美しさも特筆する点であろう。タクティックス(戦術)、闘い、権力、弱肉強食等のキーワードを連想させた前作に対し、今回はとてもローカルな、日常や温もりといったものを連想させるテーマを選んでいる。その振れ幅に、eizo氏の世界の捉えかたの一端を見い出し、好感を覚え、評価した。 [33] (泰平賞最終候補)、ネオ自由律氏によるネオ自由律、内容が「ネオ自由律」。意味を探ろうとしたら頭がおかしくなりそうな句である。そこには広がりを許さない、とてつもない怖さがある。緊張感に満ちたストイックさもある。呆れ返る程のアホさもある。番号が202(ネオジ)とかだとさらに良かった。笑。 「泰平おもろ賞」の「躊躇・薔薇・憂鬱」はタイトル、名前、内容を統べて漢字で表わした、トータルコーディネートされた句である。しかし何故だろう、なんだかとっても笑えた。その行為は勿論、選んだ漢字が笑えた。この人はバカです。 「泰平音楽賞」のNICO氏の名はVelvet UndergroundのNICOからきたのであろうか?だとしたら尚かっこ良い。RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUN DOG RUNと詠んでいくうちに17小節目から4つ打ちが始まりそうなその律動は、内容の疾走感とも相俟って、とても心地の良い音楽を感じさせる。 (泰平おもろ賞最終候補)、お腹っぷ…ん?何と読むんだろう?おなか…っぷ?オナカップか。アホ!この人の「じゅわ じゅーわわ じゅわ じゅわ じゅー じゅー 肉食べたいな アンチベジタリアーン」を通勤中に思い出して、ずっとニヤニヤしていた。こんなバカな雰囲気を文字ノミで表現しているのはそれはそれで才能だろう。解釈すると社会風刺やら、ネオ自由律的理論を拒もうとする姿勢等が見えなくもなく少し怖くもあるのだが。 (泰平おもろ賞最終候補)なお。氏の「一人で村おこし。」は純粋に面白い。「シュールなイタズラ書き系」とでも呼ぼうか。いつか津田沼駅北口の壁に落書きしてみようかしら。絶対に話題になりそう。 (泰平音楽賞最終候補)、ひさよ氏による「あの人の机の上にミルクティー」は良く見ると5・7・5調で構成されている。だからであろうか、この心地よさは何だろう。この句には実はおもろ賞的側面もあるし、普通にもおもしろいとも感じた。内容も面白いし、心地よい。しかし少しクセが無さ過ぎるか。 <まず> はじめの挨拶にも書きましたが、5月期はかなり忙しく&紛らわしく変化を繰り返した月となってしまいました。まず、この場を借りてお詫びをさせて頂きます。そしてそのうえ審査員が最高賞を受賞するというウルトラC級の不条理までやってのけてしまいました。これは詫びるつもりはないですが、我ながら少し後ろめたさを感じていることをお伝えします。審査員が投句するという面白さはありましたが、いざ受賞したとなるとやっぱりヒクだろうから、これを機に私は「ゲスト投句」という審査対象外の投句しかしないようにしようと思いました。これからは普通投句は偽名で。(笑) <総評> 今回集まった句はとてもレヴェルが高く、審査の際に一番悩んだ点は総投句数の割に入選候補が多すぎたことでした。入選候補の多さはネオ自由律の概念が 順調に成長している証しであると思います。嬉しいことです。しかしその割に総投句数が少ないのは、前回泰平賞の論評で急激にロジックをぶつけすぎた反動なのではないだろうか。論理的なものや完成度の高いものでないといけないというプレッシャーを少なからずかけてしまったか。冒険的作品、適当に作った作品が減少したのではないだろうか、そこら辺に反省点を見い出しました。そこで格言! 「面白いものには理由があり、つまらないものには未来がある」。 面白いものばかりでは未来がないという事です。これからはどんどんつまらないもの、くだらないもの、冒険もの、何でもガンガン投句して下さい。審査ではあっさり落としますが(笑)、そんな自分に未来を感じちゃうような素敵な挑戦者を募集しマッス。6月期からは外界への広い公募も開始する予定であります。それでは皆でがんばっていきまっしょい! (感想、コメント、訂正、祝辞等は普通掲示板http://www.taihei.org/でお願いします。) (審査委員長) ──────────────────── >> 第3回ネオ自由律公募<アーカイブ> ・ ./.. ・ 天下泰平プロジェクトtop