第10回ネオ自由律公募(2003年12月)論評
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審査委員長の挨拶及び泰平賞の発表 投稿者:審査委員長 投稿日: ____________________
≫第10回(2003年12月期)泰平賞発表≪
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挨拶:第10回を迎える今回ネオ自由律公募は2003年最後の公募となりました。Geisai出品やその他諸々の事情により受け付け期間が短くなってしまったものの、今月期には163句もの投句が集まりました。皆様どうもありがとうございました。それでは早速泰平賞及び各賞を発表したいと思います。
<泰平賞> 咳をしてもひとり (by:ファンタ , No.1324)
【最終候補】
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♪♪♪♪♪ (by:のえら, No.1316)
【最終候補】
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この句は場所の都合で一部分のみの掲載となっております。全文はこちらでご覧になれます。 (by:せんとりす, No.1250-1252)
【最終候補】
The thawing of snow water blue of the sky which it can freeze of from the your mail
…The 「Time」 and the 「word」 which you take there and are left. (by:Yuna, No.1238)
【最終候補】
1.はい 2.いいえ 3.どちらでもない 4.その他( )
(by:マ, No.1268)
【最終候補】
新車の匂いが嫌いだよ♪新車の臭いはいやらしいよ♪♪
葉っぱの形のアレ、ほら、芳香剤があるでしょ?色んな色が有ってさ、皆結構使ってるけどさ…アイツのニオイと混ざるとさ、ホンッともぅ最悪だよね!
新車の匂いが嫌いだよ♪新車の臭いはいやらしいよ♪♪
あのニオイってさ、やっぱりシートから出てるのかな?エアバッグとかさ、そーゆー開発よりさ、まずこのニオイを無くしてみろってさ、開発者に言いたくなるよね、ほんとツライ時はさ…
新車の匂いが嫌いだよ♪新車の臭いはいやらしいよ♪♪
ん〜、それでも新車がニオウって事はさ、あのニオイが好きな人もいるのかもしれないよ?このニオイだけはそのままで…って嘆願されたらさ、私だってそりゃ少しは考えるものさ。(by:みうらりか, No.1194-1196)
【最終候補】
00-00-33-00-33-AA-66-AA-33-55-00-00-00-00-00-00-22
00-00-33-00-33-AA-88-AA-33-55-00-00-00-00-00-00-22
(by=97:, No.1174/1175)
【最終候補】
あそこには あったんだ
でも もうないよ (他6句)
この句は場所の都合で一部分のみの掲載となっております。全文はこちらでご覧になれます。 (by:ジョ〜, No.1228-1234)
【最終候補】
1i!I!i1i!I!1i!iIi!1!i!I!i!1!I1i!i!I1i!I!i1I1
I!i!1Ii1I!1!I1iI1!I!i!i!i!1!i!iI1!i!Ii1!i!iI (by:ダック, No.1193.5)
【最終候補】
●○○○○○○●
●○○○○○●●
●●●○○●○○
●●○○●○●○
●○●○○○●○
●●○○○●○○
●●●●●●●○
●●●●●●●○ (by:のえら, No.1192)
《奨励賞》
スペースの関係で番号と作者名のみの発表とさせて頂きます。
No.1169(by:Yuna), No.1170(by:みうらりか), No.1171(by:Yuna),
No.1180(by:マーガレット・パーカー), No.1189(by:のえら), No.1190(by:いっちー),
No.1199(by:マ), No.1201(by:ダック), No.1210(by:.¥^),
No.1211(by:マーガレット・パーカー), No.1218(by:のえら), No.1221(by:D pink),
No.1223(by:せんとりす), No.1224(by:D pink), No.1225-1227(by:マ),
No.1237(by:Yuna), No.1240(by:D pink), No.1243(by:のえら),
No.1253(by:みうらりか),No.1258(by:eizo), No.1259(by:ありす),
No.1265/1266(by:いっちー/Yuna), No.1269(by:マ),No.1274(by:せんとりす),
No.1275-1278(by:1), No.1284(by:eizo), No.1287(by:東風),
No.1293(by:のえら), No.1294(by:タップ), No.1295(by:まっち),
No.1298(by:せんとりす), No.1301(by:いっちー), No.1302(by:せんとりす),
No.1306(by:のえら), No.1307/1308(by:プランク・ドラゴン), No.1310(by:せんとりす),
No.1315(by:みうらりか), No.1320(by:だっく), No.1328(by:せんとりす),
No.1331(by:ありす).
(順不同)
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<評>
[10t]
> 咳をしてもひとり (by:ファンタ , No.1324)
この句は、ん?見たことあるぞ。これは自由律俳句の父、尾崎放哉大先生の代表作ではないか。尾崎放哉記念館のサイトによると放哉の句は正確には「咳をしても一人」だ。漢字/ひらがなの小さな違いはあるものの、しかしどう考えても意識的に投句したとしか思いようがないセンショーナルな句だ。この句、実はとても深い。ちょっと専門的なため、読者を説得できるか不安ですが、頑張ってみます(笑)。
■ デュシャンmeets放哉
マルセル・デュシャン(1887-1968)というアーティストがいる。実は過去の論評にも数回登場しているのだが、それもそのはず、実は美術業界ではピカソやゴッホよりも重要視されている人物なのだ(No.258:論評、No.844:論評)。そんなデュシャンが重要視されている一番の理由は、彼が美術における職人的技術やクリエイティビティーを放棄して概念の部に着目したことと、それを喚起する作品を多く残したことにある。その代表作が「レディーメイド」だ。「レディーメイド」とは大量生産されている工業製品をスーパーやらコンビニ(笑)やらで買ってきて、自分のサインを書いて自分の作品として発表するという、デュシャンが行った行為とその作品を示す言葉だ。もっとも有名なレディーメイドは便器にサインを書いて展示した「泉」である。
彼は1917年、買ってきた便器にサインし、それを展示、後に大きな話題を呼んだ。繰り返すが、これは買ってきた便器を展示したという、美術展示における概念部に焦点を当てた作品なのだ。
あと、もうひとつ「L,H,O,O,Q」という作品も紹介したい。見えにくいかもしれないが、これはモナリザの複製画に悪戯書き(チョビ?ヒゲと顎ヒゲを加えている)をした作品だ。買ってきたものにヒゲを描いてタイトルを付けて自分の作品として展示しちゃったのである(なんと!かっこいいではないか!)。さらに、この後デュシャンは「鬚を剃ったL,H,O,O,Q」というタイトルで、加工してないモナリザをそのままを自分の作品として扱ってもいるのだ(すげえ、天才だ)。…要するに、ここでも職人的技術やクリエイティビティーを放棄して「これを私が美術品として展示する意味」そのものを展示したということだ。
と、ここまで説明したらある程度わかったと思うが、ファンタ氏のこの句は尾崎放哉の代表作を引用し、自分の作品として投句した「レディ・メイド」なのである(No.844同様、工業製品でないため「概念のレディーメイドといった方がいいかもしれないが…)。では、これはパクリではないか。そうなんです。パクリなんです。この句は放哉とデュシャンを同時にパクった句なのです!!
以前にも書いたが、尾崎放哉とマルセル・デュシャンはほぼ同時期に作家活動をしているのだ。自由律俳句の同人誌「層雲」の創刊が1911年、デュシャンの最初のレディーメイドが1913年、放哉が初めて「層雲」に寄稿したのが1915年、上述した「泉」の発表が1917年といった具合にだ。1914年には第一次世界大戦が勃発してることから、産業革命の浸透により、それまでとは全く違い、世界同時性(国境を隔てていても考えてることは似たようなもの)がすでに生まれていたのではないか。と、考えるとアメリカ(実はフランス出身だが)におけるデュシャンが日本における尾崎放哉だという見方をしても悪くはないはずだ。
なんにせよ、時は経ち、産業革命以来の革命であり、世界同時性がいよいよ顕著になってきているIT革命期において、マルセル・デュシャンと尾崎放哉の「思い」が出会い、ネオ自由律が誕生したのだ。ファンタ氏はこの句でその出会いの感動を見事に再現しているのである。この句は、言い換えると、マルセル・デュシャンmeets尾崎放哉な「ネオ自由律」を「マルセル・デュシャンのスタイル」と「尾崎放哉の句」を掛け合わせることにより同語反復的に表現した句なのだ。この句についての考察は、ネオ自由律そのものについての考察だといっても過言ではない。ネオ自由律の提唱者である私の「思い」までもを見事に反映していた、まるで、来るべくして来た「運命の句」のようである。ブルル。
■ ファンタ
とても余談なのだがファンタという飲み物はナチスドイツより「ヨーロッパ文明への脅威」として迫害されたコカ・コーラの代用品として、ドイツのコカ・コーラボトラーが開発した飲み物だそうな。メジャーなモノの代用品として生まれた、どこか二次的な香りのする飲み物の名前は、なぜかこの句にピッタリだ。ちなみに、ファンタ(FANTA)の名称は、Fantasy(空想)、Fantastic(空想的な、実に素晴らしい)から来ているそうな。
[101]
> ..............................................................................♪… (by:のえら, No.1316)
■ 限界を超越する音符のスイミー
この句は標準サイズの音符マーク(♪)沢山で、特大サイズの音符マークを描いた(詠んだ)句である。実は、のえら氏は前回公募で音符マーク(♪)を拡大した句を投句して奨励賞に輝いている(No.991)。その際僕は、「ネオ自由律における「律」の強調か?でかいのが良い。もっと、怖いくらいデカくても良かった。」と論じたが、その後、掲示板の機能上それ(font size=8)以上デカくできなかったことが判明した。…と、このような話の後のこの句だったので正直吃驚した。小学校の教科書に載っていた「スイミー」を思い出した。
「スイミー」
ちいさな赤い魚の兄弟たちのなかで、1匹だけ真っ黒の魚の「スイミー」
大きなマグロがやって来て、兄弟の魚たちを飲み込んでしまいます。逃げられたのはスイミーだけ。
けれど、海の中にはくらげやいせえび、いそぎんちゃくなどいろんな生き物がいます。そんな中見つけた、スイミーにそっくりな小さな赤い魚たちに「遊ぼう」って誘っても「大きな魚に食べられるから」と岩陰から出て来ません。
スイミーは考えて・・・皆で大きな魚のふりをして泳ごうとみんなを誘います。赤い魚たちの中でスイミーは目になって、みんなで力を合わせ大きな魚を追い出しました。(絵本ナビより)
…今考えると北朝鮮のアニメ並みの共産主義思想啓蒙話に聞こえなくもないが、一つ一つの小さな「個」が集まって限界を超越しようとする様はやはりかっこいい。掲示板の機能上不可能な大きさの音符のイリュージョン。ロマンチックだぁ!
■ 音符で音符を
No.991の論評でも書いたが、モチーフ&素材が音符(♪)だというのも重要ポイントであろう。「ネオ自由律」の「律」は自由律俳句の「律」であり、おそらくそれは俳句における5・7・5の17音の「律」にかけたものである。「律」を広辞苑で調べてみると「おきて。きまり。法則…」とある。ということは「自由律俳句」というのは「規律から自由な俳句」という意味でとらえるべきであろう。しかし、偶然か必然か「律」という言葉には「音の高さ。楽律。音律。…」といったような音楽的な意味合いもあり、俳句における5・7・5のリズム(律動)と呼応していたりもするのだ。百分は一見にしかず、ということで俳句を音符で表わしてみる。
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ほら、しっくりくるでしょう?これが俳句なのだ(強引)。これと比べて見ると、のえら氏の句はなんとエネルギッシュなことか。ネオ自由律のとてつもない可能性を視覚化してるようだ。少なくとも僕にはそう見える。
■ さらなる広がり
この句はこの他にも様々な見方をさせてくれる。音符(♪)を一つのネオ自由律としてみた時のネオ自由律公募行為自体が作り上げる巨大なネオ自由律だったり、(ベタ過ぎるので避けたが)最近話題のDNAだったり、物理学ににおける宇宙の解釈(ホログラムの原理)だったり、フラクタルだったり…。解いていくととてつもない量の物理学やら美学やら哲学やらの魅力達が溢れ出てくるではないか。頭の良い人だったら一冊の本が書けるかもしれない(笑)。…というくらい完成度の高い句だ。頭の悪い私はこの辺で…。
[102]
> ..............■■■■■ … (by:せんとりす, No.1250-1252)
■ 圧倒されるエネルギー
おおお。マリオだ!!この様はマリオが土管から出てくる時のものだ!!マリオが出てきた!マリオが出てきた!すげええ!どうやって作った(詠んだ)んだろう?何よりもまず、手のかけ具合、完成度に圧倒されてしまう。やはり、誰が何と言おうと、このようなエネルギーは人を魅了するものだ。掲示板のような手軽なシステムではサラリと投句してしまいがちなのだが、これほどサラリとしていなければ(笑)ひときわ目立つのは当然のことであろう。あっぱれ!
■ 漫画的表現の引用
しかしエネルギーばかりでないのがこの句のすごいところ。この句は「組作品」という、最近定着しつつある手法で詠まれている句だ。そんな組作品の特性を活かし、ここではネオ自由律史上初めて「マンガ的手法」を取り入れているのだ(ここでいう「マンガ的手法」とは静止画の連続で動きを表現する手法のことである)。漫画世代の我々にはスッと入ってくるため気付きにくいだろうが、連続した自由律俳句で動きを表現しようとするという不可能性は良く考えるとぶっ飛んでて、とても面白い。
■ マリオという世界語
また、ここで扱われるキャラクターが「マリオ」であるということも実は重要なのである。マリオといえば何を隠そう日本発世界ヒーローのパイオニアだ。その認知度はエスペラント語やC言語といった世界語をユウに超える程である。つまりこの句は世界中の人間が理解し、楽しむことのできる句なのだ。また、もしマリオが世界語的思想を象徴し得るのであるなら、ネオ自由律においてマリオが出てこようとする様(動き)を表現するということは…。.....まっいいか。
■ 著作権問題にも果敢にチャレンジ!
さらにさらに、この句はあの著作権問題に厳しい任天堂をも説得しうる(?)屁理屈をも持ち合わせているのだ。前回最終候補だった八重氏の句(No.960、論評)同様、この句は一見マリオに見えるが実は「..............■■■■■..............................■■■■■■■.............................」というように■で構成された文(ネオ自由律)にすぎないのだ。このような屁理屈を用意して、大企業を挑発&著作権問題を嘲っているように解釈するのは私だけであろうか。むむむむ。かわいい顔して危険なトゲもあるのね。ふむふむふむふむ。
[103]
> The thawing of snow water blue of the sky which it can … (by:Yuna, No.1238)
この句の前には、この句と同じような、青いグラデーションのかかった日本語で詠まれた句が投句されている。それを見ると、本来「ネオ自由律」と書いてあるはずのタイトルの部分に「Neo free verse」、そしてその下には「(↑AltaVista's Babel Fish Translation Serviceで翻訳したらこうなりました/謎)」と書いてある。さらに、15分後に投句されたこの句のタイトルは「Neo free verse(英訳)」となっているコトから、この句は前の句(No.1238)をAltaVista's Babel Fish Translation Service(*)にかけ翻訳するという手法を使って詠んだ句であることが予想される。しかし、良く見ると文法が少し変なのである。「from the your mail」なんてどう考えても文法間違いだ。というわけで原因を探るべく、実際に(No.1238)をAltaVista's〜にかけてみた。すると、下段はピッタリ一致したが上段は「The thawing of snow water from the blue your mail of the sky which it can freeze」と翻訳され、句とは一致しなかった。何故こうなったのかあれこれ考えたり実験したりしてみた。すると、犯罪心理学ではないが、作者の心の動きが見えてきたのだ。
Yuna氏は最初の句を投句してから約15分の間に以下のような行動をしたのではないか。
1. AltaVista's Babel Fish Translation ServiceにNo.1238の句をかける。
2. 結果、単語の順序(意味)が原文と明らかに違うものであったため困惑。試行錯誤。
3. 「雪解け水」までは正しい順序だったので「凍れる空の青」を単独で翻訳にかけてみる。
4. 全体から「雪解け水(…と思われる箇所=The thawing of snow water)」と「凍れる空の青(Blue of the sky which it can freeze)」を削り(The thawing of snow water from the blue your mail of the sky which it can freeze)残ったの部分(from the your mail)を後ろに添付。
5. 下段をそのまま付け、全体に青いグラデーションをかけ、投句。
と、こんな感じだったのではないか。…図星だろう。 ていうか、これ以外のプロセスは考えにくい。しかし、なぜ「雪解け水」「凍れる空の青」「あなたからのメール」と、一つ一つ訳していかなかったのだろうか。いや、何より、なぜ自分の句を翻訳にかけたのか。なぜ全体に青いグラデーションをかけたのか。もしかすると、そこにはYuna氏の一貫したネオ自由律観(ネオジー)が反映されているのではないか。犯罪心理学(笑)を追求していた時、Yuna氏の「言葉に対する姿勢」が少し見えた気がした。それは言葉を扱うというよりは絵の具を扱うのに近いものだった。Yuna氏はネオ自由律を詠む時、言葉の「コード」にとらわれず、絵画的に言葉を組み合わせ、組み換えていくのであろう。この句の強烈なインパクトは、それぞれの加工(グラデーション、翻訳、翻訳修正)が、そんなYuna氏のネオ自由律観(ネオジー)とシンクロすることによって生まれたものではないか。やはり自分の感覚をとことん追求して詠んだ句は強い!と、改めて考えさせられた。
余談だが数年前に私、泰平も、自分の詩を世界中の人に<原文→英語→フランス語→ギリシャ語→英語→日本語>といった具合に翻訳してもらいながら伝言ゲームをしていくプロジェクトを行ったのだ(@アメリカ)。自分の詩が他言語野の人の脳を通って加工されることに興味を抱いたという意味で、Yuna氏にシンパシーを感じたり…。興味がある方は見てちょ↓
→ Intervenient Response Project 日本語版(9カ国語、20人)、英語版(9カ国語、24人)
*AltaVista's Babel Fish Translation Service:インターネット上で無料で利用することのできる、10カ国語に対応した簡易翻訳サイト。
[104]
> 1.はい 2.いいえ 3.どちらでもない 4.その他 … (by:マ, No.1268)
この句はアンケートの回答を記す部分を、それが本来属している文脈から切り取り、ネオ自由律として投句した句である。言わなくてもわかると思うが、通常のアンケートではこの前に質問事項が書いてあり、その回答に該当するものをこの中から選び、ここに丸を付けたり数字を別記したりするのだ。しかし、この句には二つの不可解な点がある。一つは、この句にはその質問がないということだ。ない質問の答えを求めるアンケート、はたしてその真意はどこにあるのか。そこで気になるのがもう一つの疑問点だ。この句を良く見ると、「はい」「いいえ」「どちらでもない」以外に「その他」もあり、そこに自由な回答を書き入れることのできる空間が用意されているのである。ん?「はい」「いいえ」「どちらでもない」以外の答えなど果たしてあるのだろうか。いや、ないはずだ。なぜなら「どちらでもない」は「その他」と同義語だからだ。いやいや、しかし果たしてそうなのか。ないとは必ずしも言えないのではないか…。相対性理論や非ユークリッド幾何学が頭に浮かぶ。天才が提唱する物理空間における様々な事象の可能性は常人の脳みそで容易に想像出来るものではない。もしかするとこのアンケートは、そんな「はい」「いいえ」「どちらでもない」以外の、次元を超越した回答をも受け止めうるアンケートなのかもしれない。うう。しかし…ここには肝心の質問が存在しない…。いや!良く考えると「はい」「いいえ」「どちらでもない」以外の回答などあり得るのか?という疑問がある!それに対する答えを求めるアンケートだとしたら…。おお!常識を超越する空間/概念に対する意識調査アンケートなのか!!「あなたは超越を信じますか?」と聞いているようなものか。おおお。なるほどそういうことか。ふむふむ(強引?)。
[105]
> 新車の匂いが嫌いだよ♪新車の臭いはいやらしいよ♪♪ … (by:みうらりか, No.1194-1196)
お笑い芸人の漫才やネタも他のジャンル同様、歴史の上に成り立っているものなのだ。…と、正月のお笑い番組を見て思った。ネタの間にそのコンビのオリジナルコメント、というか小林亜星のコマーシャルソングみたいなフレーズ(?)を挟んだりするアレを見るとそう感じる。誰が始めたのかわからないが、アレは物心ついた頃からあった気がするし、今でもかなりの芸人が押さえているセオリーだ(よく考えるとなんだか不思議な文化だ)。アレはおそらく「他との差別化」と「内容の平均化」のためにあるのだろう。みうらりか氏のこの句は3句で構成された「組作品」であるが、いずれの句も「新車の匂いが嫌いだよ♪新車の臭いはいやらしいよ♪♪」というフレーズを冠においている。これはまさしくお笑いのアレではないか。つまり、この句はお笑いの文脈から上述したスタイルのみを引用して詠んだ句なのだ。しかし内容は、お笑いとは一線を画した、みうらりか氏独特の「ネオ自由律以外なんでもない」むしろ「愚痴」や「苦情」に近いものだからすごい(とらえ方によってはシュールな笑いもおこるが…)。お笑いの歴史から「他との差別化」と「内容の平均化」のための手段を引用し、訴える内容が「愚痴」や「苦情」だからそのギャップに魅了されてしまう。この句は、まるで「外観はパチンコ屋のようで中身は美術館」のような心地よいミスマッチを提案している、豚骨醤油ラーメンのような、クセになりそうなネオ自由律なのだ。それにしても、このような内容をこのテンションで詠むみうらりか氏の思考回路はどんなものなのだろう。血液型は何?と聞きたくなるわ。
[106]
> 00-00-33-00-33-AA-66-AA-33-55-00 … (by=97:, No.1174/1175)
これはなんだ?なんだんだぁ〜!?何かの暗号というよりは実社会で使われる何かしらの記号列の引用というイメージだ。だとしたら、元ネタがわからなければ審査ができないのではないか。さて、元ネタは何だろう。C言語ではない、DNA配列関係でもない、住基ネット番号でもない、銀行関係でもない…。誰かに聞いたらわかるだろうか。検索にかけても変な事になってしまうし…。わからないまま下手にコメントするのもコワい。いっそのこと選外にしてしまおうか…(笑)。本屋に行ってそれらしき文献に目を通してみたり、周りの人に聞いてみたり、あの手この手で検索して調べてみたり…。このように数日間奮闘したのにも関わらずヒントらしいものにもありつけなかったため、さんざん迷いながらも、ネオ自由律公募史上初めて作者に問い合わせることにした(何という屈辱)。「申し訳ありませんが、これはなんですか?」という問いに対して、作者の返事は以下の通り「深読みさせて申し訳ないんですが、何でもないです。策士ぶっちゃいました!なんか評でそれらしく書いてもらいたかったので」。ガーン。…やられた。完全にやられた。なんという敗北感だ…。あああ。ネオ自由律は「それが何であるか」より「それがどう見えるか」や「どのようなものを喚起するか」に重きをおいているものだ。…なにも文句の付けようがないではないか。はぁ〜…。完璧だ。完璧にやられた…。あああ…。
[107]
> あそこには あったんだ … (by:ジョ〜, No.1228-1234)
この句は7句で構成された組作品である。それにしてもなんという不穏な空気だ。自由な表現の場を与えられて、このような句を詠もうとする人も珍しい。この句を見た時、M/OTHER(1999年、諏訪敦彦監督)という映画を思い出した。M/OTHERは、同棲をしている男女と男の前妻との子供の間に起きる気まず〜い空気の流れを描いた映画である。作品全体に不穏な空気が流れ、黒板を爪で引っ掻くときの音のような、観客を不安定な気持ちにさせるヴァイオリンの挿入音がそれを助長するのだ。娯楽であるはずの映画において徹底して不穏な空気を流す様は圧巻だった。いわゆる面白いといわれるような映画とは一線を画したものだろう。しかし何より、映画を撮ろうとする者があのようなテーマを選び、あのような描写をしたということ自体に興味を持った。何度も繰り返し見てしまった。で、そのうちその空気にはまり、同じような映画を探すようになってしまったのである。新しい感覚を提案する映画というべきか。一度はまると抜けだせなくなる類いのものだ。
[108]
> 1i!I!i1i!I!1i!iIi!1!i!I!i!1!I1i!i!I1i!I!i1I1 … (by:ダック, No.1193.5)
一見すると秩序正しく配列されたカラフルな棒の連続に見えるが、良く見ると、その棒は「1」だったり、「i」だったり、「!」だったり、「I」だったりする。それぞれの棒に、デリケートにも個性が宿っているのだ。またその配列だが、実は色の配列以外に秩序はないが、一つ一つ丁寧に並べられたであろうものなのだ。少し見えにくいが、4種類の棒のうち「1」だけが若干横幅が広く、それが棒の間隔を微妙にズラしている部分を作っていたりもする。以上のようなとても繊細な仕掛けに気付いてしまうと、この句はとても緊張感のあるデリケートな句に見えて来るのだ。まるで、触れただけで崩れてしまう自然界の美のような、とても儚いもののように…。
[109]
> ●○○○○○○● … (by:のえら, No.1192)
さて、これはなんだろう。囲碁ではないな。何かのゲームか。何かの絵か。電光掲示板のようでもある。「これはなんだろう」と、図を見て解釈しようとするその行為は、まるでロールシャッハーテストのようだ。これが何に見えるかによって心理状態がわかりそうだ。さて、これは何に見えるか。う〜ん。えっと、顕微鏡の下半分…。プレートから下半分。…このように見える私の心理状態はいかがなものであろうか。「覗けない真相を覗きたいという」心理の表れか。てへ
奨励賞の40句に、一言づつ。
No.1169(by:Yuna):確立されている世界観の中で肩の力が抜けた句が生えている。
No.1170(by:みうらりか):意味不明な指差し確認を口に出すどころか投句してしまっている巨匠。
No.1171(by:Yuna):そこはかとなくサブカルチャー臭がする気になる句。
No.1180(by:マーガレット・パーカー):単語のみで魅せるスゴワザ。このまま開拓を続けて欲しい楽しみなスタイルだ。
No.1189(by:のえら):史上初!ギャル文字で詠まれたネオ自由律。内容がスタイルの魅力部に呼応してなくて少し残念。
No.1190(by:いっちー):いつも最後の行でまとめがちだが、この句は逆に突き放している。まとめるより突き放すくらいの方が強い。広がりができる。余韻が気持ち良い。
No.1199(by:マ):自由な表現の場でなぜか消極的な言葉。こういう場だからこそなのか…。あ、気になって来た。
No.1201(by:ダック):広告のコピーのような句。完成度が高いということか…。
No.1210(by:.¥^):かなり面白い。でももっと良くなった気がする。少しもったいない感じ。
No.1211(by:マーガレット・パーカー) :ジム。名前だったり施設だったり役職だったり。ところでジムって不思議な施設だなぁ〜。とても人工的で無機質だけど、んんん…。(以下略)
No.1218(by:のえら):皆と同じ条件下で出来た句だとは思えない感じ。この句を皮切りに名作が沢山生まれたし、これからも生み続けるだろう。パイオニアだ。
No.1221(by:D pink):色面で魅せる句。やっぱり目立つ!
No.1223(by:せんとりす):No.1218同様の驚き。使ってる文字は「=」のみなのに…そうは思えないなぁ。
No.1224(by:D pink):うっすらと見えるDの文字。D pinkのDか。
No.1225-1227(by:マ):なんだこれ。「欽ちゃんの仮○大賞」なみの変な空気だぞ。…かわいらしいな。うん。
No.1237(by:Yuna):内容と色(グラデーション)がとてもマッチしていて強い説得力を生んでいる。
No.1240(by:D pink):ん?家かな?色面(No.1221)、文字(No.1224)ときて次は絵か。素敵な展開だ。じっくり色々試してもらいたいところだが…。
No.1243(by:のえら):そうそうそうそうそうそう。これこれ。
No.1253(by:みうらりか): なんだかわからないが、とてもおかしな空気が流れています。なんなんだこれは。笑
No.1258(by:eizo):泰平賞発表用掲示板で予め掲示板の土地を確保する時に書かれる言葉の引用。コンセプトは面白いが内輪ウケすぎるのて評価はココまでか。いや、コンセプトは面白いんです。論評も沢山書けるんですが…。
No.1259(by:ありす):No.932の続きか。かなりカッコヨク期待を裏切っている。何かが見えちゃってる人のようだ。
No.1265/1266(by:いっちー/Yuna):初の複数人での連作奨励賞受賞。アホな二人…と言っては失礼だが、なんにせよブッ飛んでて楽しい。あの娘って誰だ?笑。点は1点ずつね。
No.1269(by:マ): No.1268と連続投句でなければこの句も最終候補になっていただろう。おもろいアイデアは出し惜しみしましょう。
No.1274(by:せんとりす):なにが繰り広げられているのか、全くわからない…。なんなんだこれは!!!説明してくれーー!!
No.1275-1278(by:1):わずかな秩序はあるものの、かなり感覚的に詠まれた句のように見える。そのせいか、不思議な世界観がある。
No.1284(by:eizo):No.1258に同じ。この後これは編集され何か他のものが掲示されるであろうという期待感が素敵。実際に編集して何かが出ても面白かった(評価しやすかった)。
No.1287(by:東風):No.975の続きのようだ。情景描写がなく、位置情報と感情表現しかないため状況が気になる。勝手な想像をしてしまう。
No.1293(by:のえら):前回泰平賞句のパロディー。しかしやっぱりいいなぁ。かっこいい。
No.1294(by:タップ):実は最終候補にしかけてやめた。この句もかなり好きだが、もっともっといける気がしている。もう少し様子見。
No.1295(by:まっち):漢字の変換が思わぬ妄想を招いたりする。そんな現代的なささやかな楽しみが可愛らしく表現されている。
No.1298(by:せんとりす):深夜ラジオのハガキ職人なみのクオリティー。実話風だが小説的でもある読み易い。
No.1301(by:いっちー):かっこいいいいいい。かっこいいぞ。なんかクラクラするわ。テーマもいいし、選ぶ言葉もテンポもすべてがうまくいってるような…。名作だ。
No.1302(by:せんとりす):No.1294同様、期待するジャンル。韻の踏み方はシェークスピアの引用か。ふむふむ。
No.1306(by:のえら):接続詞「も」の繰り返しだとしたら、英語的にはwith with with with…か。omoroi。
No.1307/1308(by:プランク・ドラゴン):あ(No.505)、ん(No.709)と来てとうとうアルファベットに。笑。
No.1310(by:せんとりす):Windowsについてくるゲームの引用か。そうそう、最初は手がかりがなくこわいのだ。
No.1315(by:みうらりか):「かわいいー」を保ったままの不思議報告。天然少女的魅力。
No.1320(by:だっく):爆笑。ふと思い浮かんでしまった感がいい。だからどうしたー!
No.1328(by:せんとりす):(No.960 by:八重)を受けての句なのだろうか。だとしたら、なんという幻だ!
No.1331(by:ありす):天才。この人の頭の中が見てみたい。
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≪ネオ自由律俳人講評≫
【あそこの山】
(あそこの山氏の今月の投句はありませんでした)
【シス】
No.1204(評価D):2個目の文節が内容をつまらなくしている。
No.1205(評価C):偶然なのか、性器や性交渉を想起させる言葉選びだ。展開としては新しいし、普遍的なテーマで面白い。文の魅力が加わればもっと良くなる。
No.1219(評価D):投句前にもう一度だけ練ってほしかった。
No.1311(評価C):No.1204同様2個目の文節が内容をつまらなくしている。とても惜しい。
No.1329.5(評価C):良いのか悪いのかよくわからない。けど、素晴らしくいい訳でもないし、かといって悪いわけでもない。奇妙だ。
一言:最近のシス氏の句には本来の魅力が出てきてないような気がする。本来の魅力とは「ユニークな言葉の選択」や「独特のイメージ追求プロセス」が生む緊張感と爆発力だが、どうも最近は表面的なアイデアや内容にとらわれている気がしてならない。自己模倣に走らない分これからの展開は楽しみだが、このままどんどん普通になっていってしまう不安もある。たまには自分の過去の句も見直して気持ちの変化を分析してみるのも良いかもしれない。期待が大きい分今回は辛めで。
【Cryptony】
No.1184(評価B):おお。すげーー。色々なものに見える。触感まで想像出来そうだ。
No.1185(評価B):はかなげで繊細そして少し微笑ましい。素敵
No.1186(評価C):遠くから見た山の電線とか、リフトとか…。距離感がいい。
一言:やりすぎず、一定のクオリティーを保っていて素晴らしいと思う。ネオ自由律俳人ならではの、ギャラリーで見せることを前提に詠んでいるところもいい。皆羨ましがっているのではないだろうか。どんどん羨ましがって、このスタンスを盗んでほしい。
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総評:毎月毎月論評の発表時期が遅れていき、今月はとうとう月末中の月末の発表となってしまい、本当に申し訳ありませんです。論評を読んでから次の月の投句をしようと考えているマジメな方達には本当にご迷惑をおかけしました。これからは、このようなことがないよう色々対策していこうと思っております。これに懲りずに引き続き天下泰平プロジェクトをお支え下さい。今月も沢山の投句ありがとうございました。
ご意見ご感想、ネオ自由律トークは普通掲示板にて受け付け中です。皆様のご参加お待ちしております。
審査委員長:施井泰平
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